夜11時に布団に入ったのに、決まって午前2時や3時といった丑三つ時に目が覚めてしまう。その後は、明日の仕事や家庭の悩みが頭を駆け巡り、朝までうとうとと浅い眠りを繰り返す……。このような「中途覚醒」の症状に悩まされている方は、決してあなただけではありません。
年齢を重ねるにつれて睡眠の質が変化するのは自然なことですが、日中の眠気や集中力の低下など、日常生活に支障をきたすようであれば対策が必要です。「病院で睡眠薬をもらうのは、依存性が怖くてどうしても抵抗がある」と感じている方にとって、心身のバランスを整える漢方薬は非常に有力な選択肢となります。
結論から申し上げますと、中途覚醒の改善において最も重要なのは、単に「不眠に効く」と書かれた薬を買うことではなく、ご自身の「証(しょう)=体質」に合致した漢方薬を選ぶことです。
漢方の世界では、同じ「夜中に目が覚める」という症状でも、その原因がストレスによるものなのか、加齢による冷えなのか、あるいは胃腸の弱りなのかによって、選ぶべき薬が全く異なります。選び方を間違えると、効果が出ないばかりか、かえって体調を崩してしまうこともあります。
この記事では、漢方・セルフケア・コンシェルジュである私が、漢方専門医の監修のもと、東洋医学の視点から中途覚醒の原因を紐解き、あなたの体質にぴったりの漢方薬を見つけるための道筋を詳しく解説します。
この記事でわかること 3点
- 東洋医学から見た「夜中に目が覚める」3つの根本原因(気・血・水の乱れ)
- あなたはどれ?イライラ・疲れ・加齢など5つの体質セルフチェック
- 【医師厳選】中途覚醒におすすめの漢方薬5選と、効果を引き出す飲み方
中途覚醒と漢方:なぜ「体質」で選ぶ必要があるのか?
このセクションでは、なぜ中途覚醒の対策として漢方が注目されているのか、そしてなぜ「体質(証)」に合わせることが絶対条件なのかについて、西洋医学的なアプローチとの違いを交えて深く掘り下げていきます。
「とりあえずドラッグストアでパッケージを見て良さそうなものを買ったけれど、全く効かなかった」という経験はありませんか? それは、あなたの体の状態と薬の性質がマッチしていなかったからかもしれません。漢方薬は、症状そのものだけでなく、その症状を引き起こしている「体の土台」にアプローチする医学だからです。
睡眠薬とは違う?漢方が不眠にアプローチする仕組み
一般的な西洋医学の睡眠薬(睡眠導入剤)と漢方薬では、不眠に対するアプローチが根本的に異なります。
西洋薬は、脳の神経伝達物質に直接作用し、興奮を鎮めたり、強制的に眠気のスイッチを入れたりすることで睡眠を誘発します。即効性に優れており、「今夜どうしても眠りたい」という時には非常に頼りになります。しかし、その反面、「薬がないと眠れなくなるのではないか」という依存への不安や、翌朝まで眠気が残る「持ち越し効果」、ふらつきなどの副作用を懸念される方も少なくありません。
一方、漢方薬は「眠れない原因となっている体のバランスの崩れ」を整えることを主眼に置いています。
漢方では、不眠を単独の病気としてではなく、全身の不調のサインの一つとして捉えます。例えば、「体が冷えていて眠れない」「気が高ぶって興奮している」「消化不良で苦しい」といった、不眠の背後にある原因を取り除くことで、結果として「自然な眠気が訪れる体」へと導いていくのです。
そのため、漢方薬による治療は、睡眠薬のように飲んで30分で意識が落ちるようなシャープな効き目ではありません。しかし、継続して服用することで、睡眠だけでなく、冷え性や肩こり、イライラ、胃腸虚弱といった、付随する不調も同時に改善できるという大きなメリットがあります。
漢方専門医・漢方太郎先生のコメント
「睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)は、脳の活動を強制的に抑制する『ブレーキ』のような役割を果たします。対して漢方薬は、アクセルが踏みっぱなしになっている自律神経を緩めたり、ガス欠になっている体にエネルギーを補給したりする『メンテナンス』のような役割です。特に中途覚醒の方の中には、睡眠薬で無理やり眠ろうとしても、途中で薬の効果が切れて目が覚めてしまうというケースが多く見られます。漢方は依存性が極めて低く、自然な睡眠リズムを取り戻す手助けとなるため、薬への不安が強い方や、根本的な体質改善を目指す方に適しています。」
東洋医学で考える「眠れない原因」=気・血・水の乱れ
自分に合う漢方を選ぶためには、まず東洋医学の基本概念である「気(き)・血(けつ)・水(すい)」について理解する必要があります。これらは人間の体を構成し、生命活動を維持するための3つの要素です。
健康な状態では、これら3つがバランスよく体内を巡っています。しかし、ストレスや加齢、生活習慣の乱れによってこのバランスが崩れると、不眠を含む様々な病気が現れます。
| 要素 | 役割 | 不眠との関係(乱れた時の状態) |
|---|---|---|
| 気(き) | 目に見えない生命エネルギー。自律神経の働きに近い。 | 気逆(きぎゃく)・気滞(きたい):ストレスで気が頭に上ると、脳が興奮して目が冴える。イライラして眠れないタイプ。 |
| 血(けつ) | 血液および、血液が運ぶ栄養素。精神を安定させる働きもある。 | 血虚(けっきょ):脳や心に栄養が行き渡らず、不安感が強まる。眠りが浅く、夢を多く見るタイプ。 |
| 水(すい) | 血液以外の体液(リンパ液、汗など)。体の潤いや熱調整を担う。 | 水毒(すいどく):水はけが悪くなり、めまいや頭重感を招く。あるいは乾燥してほてりが生じ、夜中に目が覚める。 |
中途覚醒に悩む方の多くは、これらの要素が複雑に絡み合っています。例えば、更年期の女性であれば「血」が不足しつつ「気」が逆流している状態が多く見られますし、働き盛りの男性であれば「気」が滞っているケースが目立ちます。
自分の「証(しょう)」に合わない漢方を飲むリスク
漢方治療において最も避けるべきなのは、「証(体質)」のミスマッチです。
漢方薬には、大きく分けて「実証(じっしょう)=体力があり、筋肉質なタイプ」向けのものと、「虚証(きょしょう)=体力がなく、胃腸が弱いタイプ」向けのものがあります。
例えば、体力がなく胃腸が弱い「虚証」の方が、エネルギーに満ち溢れた「実証」向けの強い漢方薬(例:黄連解毒湯などの体を冷やす作用が強い薬)を服用するとどうなるでしょうか?
不眠が治るどころか、胃もたれを起こしたり、体を冷やしすぎて下痢になったり、かえって体調を崩してしまうリスクがあります。
私自身も、漢方を学び始めたばかりの頃、自分の体質を詳しく分析せずに「不眠にはこれが有名だから」という理由だけで薬を選び、全く効果を感じられなかった経験があります。その後、専門家の指導のもとで自分の「証」を見極め、処方を変えたところ、驚くほどスムーズに眠れるようになったのです。
「有名だから」「友人が効いたと言っていたから」で選ぶのではなく、「今の自分の体質に合っているか」を基準に選ぶこと。これが、漢方で中途覚醒を克服するための最短ルートであり、鉄則です。
【セルフチェック】あなたの不眠タイプを診断!合う漢方がわかる判定チャート
それでは、実際にあなたの体質(証)をチェックしてみましょう。自分に最適な漢方薬を見つけるための最も重要なステップです。
中途覚醒の原因は人それぞれ異なります。以下のチェックリストや質問に答えて、自分がどのタイプに当てはまるかを確認してください。最もチェック項目が多いものが、現在のあなたのタイプである可能性が高いです。
▼ 体質別・漢方薬選び方フローチャート(簡易版)
Q1. 寝ようとすると、いろいろな考え事が浮かんで目が冴えてしまう?
- はい → Q2へ
- いいえ → Q3へ
Q2. 普段からイライラしやすく、肩こりや頭痛がある?
- はい → 【タイプA:ストレス・イライラ型】
- いいえ、むしろクヨクヨ悩む方だ → Q4へ
Q3. 日中に疲れを感じやすく、食欲があまりない?
- はい → Q4へ
- いいえ → Q5へ
Q4. 夢をよく見る、または少しの物音ですぐに目が覚めてしまう?
- はい(胃腸も弱い) → 【タイプB:心身疲労型】
- はい(胃の不調が顕著) → 【タイプE:胃腸虚弱型】
Q5. 年齢とともにトイレが近くなり、夜中に尿意で起きる?
- はい(手足の冷えもある) → 【タイプD:加齢・夜間頻尿型】
- いいえ、急にカーッと熱くなることがある → 【タイプC:更年期・ホルモン型】
タイプA:【ストレス・イライラ型】神経が高ぶって目が覚める
- 主な原因: 「気(き)」の巡りが悪くなり、熱を持って頭に昇っている状態(気滞・気逆)。
- 特徴:
- 布団に入っても仕事のことや人間関係の悩みが頭を離れない。
- イライラして怒りっぽい、または歯ぎしりをしていると言われる。
- 肩こりや緊張性頭痛を伴うことが多い。
- 目が充血気味で、のぼせ感がある。
- 漢方的な解説: 交感神経が優位になりすぎて、オフへの切り替えがうまくいっていない状態です。溜まったストレスの熱を冷まし、気の巡りを良くする必要があります。
タイプB:【心身疲労型】疲れすぎて眠りが浅い・夢をよく見る
- 主な原因: 「血(けつ)」が不足し、心(脳)に十分な栄養が行き届いていない状態(心脾両虚・血虚)。
- 特徴:
- 体は疲れているはずなのに、神経だけが冴えて眠れない。
- 眠っても浅く、一晩中夢を見ているような気がする。
- 日中に不安感に襲われたり、物忘れをしやすくなったりする。
- 顔色が悪く、貧血気味である。
- 漢方的な解説: エンジン(体)の燃料(血)が切れてしまい、オーバーヒートこそしないものの、アイドリングが不安定になっている状態です。心を養う「血」を補うことが急務です。
タイプC:【更年期・ホルモン型】のぼせや発汗で起きてしまう
- 主な原因: ホルモンバランスの乱れにより、「血」が滞り、「気」が逆流している状態(気逆・瘀血)。
- 特徴:
- 夜中に急に体がカーッと熱くなり(ホットフラッシュ)、汗をかいて目が覚める。
- 情緒不安定になりやすく、急に悲しくなったりイライラしたりする。
- 生理周期に伴って不眠の程度が変わる。
- 手足は冷えるのに顔だけ熱い(冷えのぼせ)。
- 漢方的な解説: 更年期特有の「気・血」の乱れが直接的な原因です。自律神経の調整機能が低下しているため、そのブレを整えるアプローチが必要です。
タイプD:【加齢・夜間頻尿型】トイレで起きる・足腰が冷える
- 主な原因: 加齢により「腎(じん)」の機能が低下し、水分代謝が衰えている状態(腎虚)。
- 特徴:
- 夜中に必ず1回以上トイレに起き、その後眠れなくなる。
- 腰痛や足腰の冷え、だるさを日常的に感じている。
- 日中はそれほどでもないのに、夜間だけ尿量が多い。
- 白髪や抜け毛、耳鳴りなどが気になり始めた。
- 漢方的な解説: 東洋医学で言う「腎」は、生命力の貯蔵庫であり、水分代謝を司る場所です。ここが弱ると尿を濃縮する力が落ち、夜間の尿量が増え、睡眠が分断されます。
タイプE:【胃腸虚弱型】胃の不調や食欲不振で眠れない
- 主な原因: 胃腸の働きが弱く、消化不良や不快感で気が休まらない状態(脾虚)。
- 特徴:
- 食後に眠くなるが、夜になると目が覚める。
- 胃もたれ、腹部膨満感、または食欲不振がある。
- 軟便や下痢をしやすい。
- 思い悩みやすく、クヨクヨと考えてしまう。
- 漢方的な解説: 「胃不和なれば即ち臥(ふ)すこと安からず(胃の調子が悪いと安眠できない)」という古い言葉がある通り、消化器の不調は睡眠に直結します。胃腸を立て直すことが快眠への第一歩です。
症状・タイプ別!中途覚醒におすすめの漢方薬5選を徹底解説
ご自身のタイプは見つかりましたか? ここからは、それぞれのタイプに最適な漢方薬5選を詳しく解説していきます。ドラッグストアで購入する際や、医師に相談する際の参考にしてください。
漢方専門医・漢方太郎先生からのアドバイス
「市販の漢方薬を選ぶ際は、パッケージの表面だけでなく、裏面の『成分・分量』を確認する癖をつけましょう。同じ名前の漢方薬でも、メーカーによって『満量処方(生薬を最大量使っている)』ものと、成分量を抑えたものがあります。初めての方は成分量が少なめのものから試し、慣れてきたらしっかり効くタイプを選ぶのも一つの手です。」
1. 【酸棗仁湯(さんそうにんとう)】心身が疲れているのに眠れない方へ
対象タイプ: タイプB(心身疲労型)
中途覚醒に悩む方にまず候補として挙がるのが、この酸棗仁湯です。特に「体はヘトヘトなのに、脳だけが覚醒してしまっている」という状態に最適です。
- 特徴:
主成分である生薬「酸棗仁(さんそうにん)」は、サネブトナツメの種子で、古くから天然の睡眠薬として使われてきました。消耗してしまった「血(けつ)」を補い、心(脳)に栄養を与えることで、精神を安定させます。睡眠薬のように強制的に眠らせるのではなく、脳の過熱状態を鎮めて自然な眠りを誘います。 - 期待できる効果:
- 寝つきを良くし、夜中の覚醒を減らす。
- 熟睡感を高め、朝の目覚めをスッキリさせる。
- 精神的な不安感を和らげる。
- 注意点: 胃腸が極端に弱い方は、稀に下痢や食欲不振を起こすことがあります。
2. 【加味帰脾湯(かみきひとう)】不安感や貧血気味で途中で起きる方へ
対象タイプ: タイプB(心身疲労型)・タイプE(胃腸虚弱型)
酸棗仁湯と似ていますが、より「胃腸の弱さ」や「貧血傾向」「不安感」が強い方に向いているのが加味帰脾湯です。
- 特徴:
「帰脾湯(きひとう)」という処方に、熱を冷ます「柴胡(さいこ)」と「山梔子(さんしし)」を加えたものです。胃腸の働きを助けて「血」を作り出す力を高めると同時に、不安やイライラなどの精神症状を和らげます。日中もなんとなく不安で落ち着かない、という方によく処方されます。 - 期待できる効果:
- 不安感や緊張感を解きほぐし、神経過敏による中途覚醒を防ぐ。
- 顔色を良くし、貧血気味の体質を改善する。
- 胃腸の調子を整える。
3. 【抑肝散(よくかんさん)】イライラ・歯ぎしり・緊張が強い方へ
対象タイプ: タイプA(ストレス・イライラ型)
元々は子供の夜泣き(疳の虫)に使われていた薬ですが、現在は大人のストレス性不眠の第一選択薬として有名です。認知症周辺症状(イライラ)に使われることもあります。
- 特徴:
名前の通り「肝(かん)=感情・自律神経」の昂ぶりを「抑」える薬です。ストレスによって筋肉が緊張し、肩こりや歯ぎしり、頭痛を伴うような不眠に効果を発揮します。「神経がささくれ立っている」と感じる時におすすめです。 - 期待できる効果:
- イライラや興奮を鎮め、リラックスした状態へ導く。
- 歯ぎしりや寝言、悪夢を減らす。
- 筋肉の緊張をほぐし、入眠をスムーズにする。
- 派生処方: 胃腸が弱い方には、胃薬成分を加えた「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」がより適しています。
4. 【加味逍遙散(かみしょうようさん)】更年期のイライラ・のぼせがある方へ
対象タイプ: タイプC(更年期・ホルモン型)
女性の不定愁訴(原因のはっきりしない不調)の代表的な漢方薬です。ホルモンバランスの乱れによる不眠には、まずこれが検討されます。
- 特徴:
乱れた「気」のバランスを整え、「血」の巡りを良くし、こもった熱を冷ますという3つの作用を同時に行います。ホットフラッシュで夜中に目が覚めてしまう方や、生理前の情緒不安定で眠れない方に特におすすめです。 - 期待できる効果:
- のぼせや発汗を抑え、睡眠環境を整える。
- イライラや落ち込みなどの精神的な波を穏やかにする。
- 冷えのぼせを改善する。
5. 【八味地黄丸(はちみじおうがん)】夜間頻尿で目が覚めるシニア世代へ
対象タイプ: タイプD(加齢・夜間頻尿型)
60代以降の方で、夜中にトイレで目が覚めてしまい、そこから眠れなくなるパターンにはこの漢方です。
- 特徴:
体を温め、加齢とともに衰える「腎」の機能を補う「補腎剤(ほじんざい)」の代表格です。下半身を温め、水分代謝を正常化することで、夜間の尿量を減らします。「頻尿さえなければ朝まで眠れるのに」という方に劇的な効果をもたらすことがあります。 - 期待できる効果:
- 夜間頻尿の回数を減らし、まとまった睡眠時間を確保する。
- 足腰の冷えや痛み、しびれを改善する。
- 高齢者のカスミ目や軽い排尿困難にも有効。
- 注意点: 胃腸が弱く下痢しやすい方は、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」などが合う場合や、逆に合わない場合があるため、専門家への相談が推奨されます。
▼ 【比較表】5大漢方薬の適応症状・体質一覧(クリックで展開)
| 処方名 | 体力目安 | 主なターゲット症状 | こんな人に向いている |
|---|---|---|---|
| 酸棗仁湯 | 中等度〜虚弱 | 心身疲労、眠りが浅い | 疲れすぎて眠れない、夢見が悪い人 |
| 加味帰脾湯 | 虚弱 | 不安感、貧血、不眠 | 胃腸が弱く、日中も不安を感じる人 |
| 抑肝散 | 中等度 | イライラ、筋肉の緊張 | ストレスフル、歯ぎしりをする人 |
| 加味逍遙散 | 中等度〜虚弱 | ホットフラッシュ、のぼせ | 更年期症状がある女性 |
| 八味地黄丸 | 中等度〜虚弱 | 夜間頻尿、冷え | トイレで起きる高齢者、足腰が冷える人 |
効果を引き出す飲み方と注意点・副作用
自分に合いそうな漢方薬は見つかりましたか? 次は、その効果を最大限に引き出し、安全に服用するための重要なポイントをお伝えします。「漢方は副作用がない」と誤解されがちですが、薬である以上、正しい用法用量を守る必要があります。
食前?食間?漢方薬の効果的な服用タイミング
漢方薬のパッケージを見ると、ほとんどに「食前または食間に服用」と書かれています。これは、漢方薬の成分が空腹時の方が吸収されやすいためです。
- 食前: 食事の約30分前。
- 食間: 食事と食事の間。つまり、食事を終えてから約2時間後(空腹になった頃)です。「食事の最中」という意味ではないので注意してください。
胃の中に食べ物が入っていると、生薬の成分が食べ物と混ざって吸収率が下がったり、特定の成分が変化してしまったりする可能性があります。また、漢方薬独特の香りや味も薬効の一つ(アロマテラピーのような効果)と考えられているため、余計な味がしない空腹時に飲むのがベストです。
ただし、胃腸が極端に弱く、漢方薬を飲むと胃がムカムカするという方は、無理せず「食後」に服用しても構いません。飲み忘れるよりは、食後でもしっかり飲む方が効果的です。
「漢方に副作用はない」は誤解!注意すべき症状
自然由来の生薬といえど、副作用のリスクはゼロではありません。特に以下の症状には注意が必要です。
- 皮膚症状: 発疹、発赤、かゆみ。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢。
- 間質性肺炎: 息切れ、空咳、発熱などが急に現れる(高齢者に多い)。
- 肝機能障害: 倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)。
漢方専門医・漢方太郎先生からの重要なお知らせ
「特に注意していただきたいのが『甘草(カンゾウ)』という生薬です。多くの漢方薬に含まれており、砂糖の何倍も甘く、痛みを和らげるなどの優れた効果がありますが、摂りすぎると『偽アルドステロン症』という副作用を引き起こすことがあります。主な症状は、手足のむくみ、血圧上昇、脱力感(カリウム値の低下による)です。複数の漢方薬を自己判断で併用したり、甘草を含む市販の風邪薬などと一緒に飲んだりすると過剰摂取になりやすいため、必ず薬剤師や医師に相談してください。」
どのくらいの期間で効く?効果判定の目安とやめどき
「飲んですぐ効くの?」というのは誰もが気になるところです。
風邪薬の「葛根湯」のように即効性があるものもありますが、中途覚醒などの慢性的な不眠に対する漢方治療は、体質改善の意味合いが強いため、少し時間がかかります。
- 効果を感じ始める目安: 2週間
飲み始めて2週間ほどで、「なんとなく寝つきが良くなったかも」「夜中に起きてもすぐ眠れるようになった」といった変化を感じられれば、その薬は合っています。 - しっかり体質が変わる目安: 1〜3ヶ月
安定して眠れるようになり、日中の体調も良くなってきたら、徐々に飲む量を減らしたり、飲む回数を減らしたりして卒業を目指します。
【筆者の体験談】酸棗仁湯を服用して
「私が中途覚醒に悩んで酸棗仁湯を飲み始めた時、最初の3日間は全く変化を感じませんでした。『やっぱり効かないのかな』と不安になりましたが、1週間経った頃、ふと『あれ?昨夜は一度目が覚めたけど、不安な気持ちにならずにすぐまた眠れたな』と気づきました。完全に朝まで眠れるようになったのは、服用から1ヶ月が過ぎた頃です。焦らずじっくり向き合うことが大切だと実感しました。」
中途覚醒に関するよくある質問(FAQ)
最後に、薬局の店頭などでよく聞かれる質問にQ&A形式でお答えします。
Q. 病院で処方される漢方とドラッグストアの市販薬は何が違う?
A. 主に「成分の含有量」と「種類」が異なります。
病院で処方される医療用漢方製剤は、医師の診断のもと使用されるため、有効成分のエキス量が多く設定されているものが一般的です。一方、ドラッグストアで買える市販薬(OTC医薬品)は、不特定多数の方が自己判断で使用するため、安全性を考慮して成分量を少し控えめにしているものが多いです(満量処方もあります)。
まずは手軽な市販薬で試し、効果を感じるけれどもう少し効き目が欲しい場合や、コストを抑えて長く続けたい場合は、保険適用となる漢方外来を受診するのが賢い方法です。
Q. 西洋薬(睡眠薬・安定剤)と漢方薬は併用しても大丈夫?
A. 基本的には可能ですが、自己判断は避け、必ず医師に相談してください。
現在、病院から睡眠薬を処方されている場合、勝手に薬を止めるとリバウンドで余計に眠れなくなることがあります。多くの医師は、まずは西洋薬と漢方を併用し、睡眠が安定してきたら徐々に西洋薬を減らしていくという方法をとります。
漢方専門医・漢方太郎先生の回答
「併用はよく行われる治療法ですが、薬の組み合わせによっては作用が強くなりすぎたり、予期せぬ副作用が出たりする可能性があります。特に、抗不安薬と、気を静める作用の強い漢方薬を併用する場合などは注意が必要です。受診の際は、必ず『お薬手帳』を持参し、現在飲んでいる漢方やサプリメントをすべて伝えてください。」
Q. ずっと飲み続けても依存性はない?
A. 漢方薬には、一般的な睡眠薬のような依存性はありません。
睡眠薬のように「飲まないと眠れない」「だんだん量が増えていく」という耐性・依存性は形成されにくいです。体が整えば薬は不要になります。
ただし、漫然と何年も飲み続けるのではなく、症状が改善したら、「疲れた時だけ飲む頓服(とんぷく)的な使い方」に切り替えるなど、専門家と相談しながら卒業を目指すのが理想的です。
まとめ:自分に合った漢方で、朝までぐっすり眠れる体質へ
中途覚醒は、体からの「バランスが崩れていますよ」というSOSです。ただ眠らせるだけの対処療法ではなく、漢方薬でそのSOSの根本原因に応えることは、睡眠だけでなく、あなたの人生の質そのものを高めることにつながります。
今回のポイントを最後におさらいしましょう。
漢方薬選び・最終チェックリスト
| □ ストレスでイライラ、歯ぎしりがある | → 抑肝散 |
| □ 疲れすぎている、夢が多い、貧血気味 | → 酸棗仁湯 / 加味帰脾湯 |
| □ カーッと熱くなる、更年期世代である | → 加味逍遙散 |
| □ 夜トイレに起きる、足腰が冷える | → 八味地黄丸 |
【アクションプラン】
- まずは2週間、自分のタイプに合った漢方を試してみる。
- 効果実感があれば、1〜2ヶ月継続して体質改善を目指す。
- 改善が見られない、または症状が悪化する場合は、無理せず専門医へ。
漢方専門医・漢方太郎先生からの温かいメッセージ
「『眠れない』という悩みは、誰にも相談できず孤独になりがちです。しかし、漢方という選択肢を持つことで、『自分の体は自分で整えられる』という自信を取り戻すことができます。完璧な睡眠を目指して焦る必要はありません。まずは漢方の力を借りて、体と心を少しだけ緩めてあげることから始めてみてください。どうしても辛い時は、いつでも私たち専門医を頼ってくださいね。」
あなたが今夜、少しでも安心して布団に入り、朝まで穏やかな時間を過ごせることを心から願っています。
コメント